レイトン先生も僕も予定のない、つまりなんにもない休日に、決まって僕は先生の家に遊びに行く。 そこで、考古学にまつわる面白い品々や、レイトン先生の大好きなナゾを一緒に解いたりするんだ。 偶に先生が気を利かせてくれて、お菓子を一緒に食べることもある。

今日なんか、「作りたくなってね」と先生は言って、お手製のケーキをご馳走してくれた。 それも、甘いお菓子が大好きな僕のために、たっぷりとクリームの乗った美味しそうな苺のケーキ。 「おいしくなかったら残していいんだよ」なんて先生は言って、不安げな様子でケーキを食べていた僕を見つめていた。

僕はフワフワのクリームにフォークを突き刺して、ぱくりと一口食べた。
甘酸っぱい苺の味と、とっても甘くて蕩けそうなクリームの味が舌に広がる。 お店で買うケーキとは比べ物にもならないくらい、美味しい。
そのことを先生に言うと、先生はとても嬉しそうに僕の好きな笑顔で微笑んだ。

***

二人でケーキを片付けてから、先生の友人が作ってくれたパズルに僕は夢中になっていた。
その友人はパズルを作るのに長けているらしく、先生に時々自作のパズルをくれるそうだ。 解放手順が綺麗なパズルがあれば、まるで絵画のように綺麗なパズルもある。 ナゾが大好きな先生にとっては、これ以上ないプレゼントなんだろう。

僕がやっとそのパズルを解き終わった頃、先生は窓の外を見て言った。

「おや、だいぶ暗くなってきたね」
「あっ…本当だ。気付きませんでした」

来た頃はまだ明るかった空が、いつの間にか夕暮れに変わっている。 時間の経過を感じないほど、パズルに熱中していたんだ。

「ルーク、そろそろ帰りなさい。遅くなるといけないから」
「本当はもっといたいんですけど…。先生がそういうならそうします」

それでも少し惜しくて、頬を膨らませた僕を見て、先生はふふ、と笑った。
でも子供の僕にとって、一人で帰る夜道は危険だから、仕方ない。 別に先生は僕を子ども扱いをしてるわけじゃないんだけど、なんだかなあ。

***

「それじゃあ先生、また明日大学で会いましょうね!」
「ああ、そうだね。おやすみ、ルーク」
「おやすみなさい」

玄関で先生に見送られ、僕は歩道を歩き始めた。
びゅう、と吹く冬の木枯らしがちょっぴり寒くて、思わず身震いをしてしまった。 家からマフラーを持ってくればよかったな、と思う。

そういえば、家を出る時お母さんが鞄にいれたはずだ。 暫く歩いて、先生の家からだいぶ離れたところで、僕は鞄を開けてみた。

「あれ?マフラーがない…」

そこではっとした。
先生の家でケーキを食べている時、ハンカチを使う為に鞄を開けたんだった。 取り出した拍子にマフラーを落としてしまったのかもれない。
先生は先生で、ゆったりと読書をしていたからきっと気付かなかったんだ。 僕は慌てて先生の家に戻った。

先生の家に戻ってみると、なぜか明かりが消えていた。
もしかして、平日の疲れがまだ残っていたのかな。
コンコン、と玄関のドアをノックしたけれど、返事がない。

「勝手に入ったらまずいけど…」

ある時、「もし用があるならいつでもおいで」、と先生に渡された合鍵を鞄から出す。
他人の家に勝手に入るのは英国紳士失格かもしれないけど、先生なら許してくれる。 疲れて寝ていたら、あとで謝ろう。そう思って僕は玄関から家の中へ入った。
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