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※展開のスピードは裏で暗殺の練習をしています。二人とも別人。
軽く現代パロ+気持ちSF気味。
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その日の夕暮れは異様なほど赤い色をしていた。
後々考えれば、もうそこで異変に気づいていれば良かったのに。
俺はというと、一刻も早くレオナルドの家へ行こう、と何も考えずに足を進めていた。
「随分前から作っていた機械が出来上がったんですよ、」と電話越しに嬉しそうな声を聞いたのは三十分前だ。
少し変わったところもあるが、レオナルドの才能は本物だとつくづく思う。
彼にかかれば、出来ることよりも出来ないことの方が少ないんじゃないだろうか。
発明を思いついた時の、あの少年のように輝く笑顔を思い出し、くす、と思わず笑った。
それからいつも見慣れた交差点を曲がろうとして、ふと、違和感を覚えた。
(信号がついてない?)
そんな馬鹿な。
違和感が不安に変わったのにそう時間はかからなかった。
車が滅多に通らないだけなのに、何故こんなにも不安になる?
元々、この道路はあまり交通量が多くない。ただの偶然だと思ってやけに広い道路を渡りきる。
(レオナルドに早く会いたいな)
こういう時、家族以外で不安を消してくれるのは決まってレオナルドだ。
今度見せてくれると言った機械の説明で、このもやもやとした気持ちも吹き飛ばしてしまうだろうし。
自分にはちっとも理解できない難解な説明も、少し(かどうかは疑わしいが)笑えないジョークも、
彼が言うと面白いように聞こえるのだから不思議だ。
ようやく辿り着いた、今となっては一軒家の前で、小さく深呼吸をする。
顔に不安を出したままで会って、親友に余計な心配はかけたくない。
何も変わらない穏やかな空気を吸うと、心が少しばかり落ち着いた。
あらかじめ来る事は知っているだろうけれども、一応控えめにドアを開けて中に入った。
いつもなら少し賑やかなはずの作業場は静まり返っていて、レオナルド一人だけが残っていた。
そのレオナルドも、部屋へ入ってきたエツィオを見て目を見開いた。
「…エツィオ!」
「どうしたんだよ、レオナルド。そんな怖い顔をして…」
言葉には出ていなかったが、目を見れば本当に自分を心配していたのが分かる。
心配そうにこちらを伺うその様子に、ふと、信号機が止まっていたことを思い出した。
何が起こっているのだろう?
「何もご存知ないのですか?開戦のことも?」
「…えっ…開戦?」
「その様子だと、本当に何も知らないようですね…。ああでも、あなたが無事でよかった!」
開戦、開戦だって?
不吉な言葉はぐるぐると頭を巡って、けれどすぐには状況を飲み込めなかった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。まさか戦争が始まったっていうのか」
「その通りですよ。このままだと核戦争に雪崩れ込みません」
「そんな…!」
随分前から「終末論」なんてものは確かにあった。
核所有国がお互いに戦争をしかけ、それが核戦争につながり、地球は崩壊する。
それこそ御伽噺だと思っていた。御伽噺で終わらせるはずだった。
目の前が深い闇に覆われたようで、立っていられずに近くの椅子へと座り込んだ。
「ですから、この付近の住民は皆避難しています」
「ああ…知らなかった。いつのことなんだ?」
「つい二時間ほど前です。でも状況は悪くなるばかりで…。エツィオ、大丈夫ですか?」
「ああ、うん、なんとか…」
レオナルドにはそう答えたが、あまりのショックにもう何も考えられない。
茫然自失になりかけた俺をレオナルドがそっと抱きしめてくる。
「大丈夫、きっとなんとかなります。それより今は避難しましょう、ここは危険だ」
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シュウマツロンの始まり
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