きっと貴方は消えてしまうのだ だから俺は無駄な希望など抱きたくない。 傷つくのも信じるのも裏切られるのも、俺は疲れたから。 愛情というのを俺から奪っていったのなら、 一体俺に何になれと言うんだろうか。 この暖かい生きている身体の中には、 沢山の思いと沢山の涙と そして沢山の愛が詰まっているんだもの。 一体俺は幾つの涙を流したろう。 全てが無駄だと最初から知っていたなら、 ただ冷たい一人の部屋で全てを見過ごせていたのだろう。 それでも人は愚かだから、それを繰り返す。 俺は臆病者だから過去を振り返らずに早足で 駆け抜けていっただけのこと。 彼は最後まで理不尽な奴だったのだ。 一体何処に俺は彼に惹かれる場所を見出したんだろう。 世界がやっと息吹を取り戻した時だって、 俺は必死に消えゆく思い出をこの手で掴んでいたのだ。 そうしてまで俺は彼を許したかったのかもしれない。 せめて俺が死に行く間際の時だけは、 せめて、俺が眠りに付くときだけは 一度くらい、冷たい手に縋っていたって 俺から愛と涙と思い出を奪ったら、 きっと後には一つの花だけが残されるのだ。 きっと俺は、この人を何より愛していたのだ。 No.40 - 2007/01/30(Tue) 15:48:16 ********* たから始まる物語 たった一つ、言ってやればよかった。 たった一つ、してあげればよかった。 忙しない時の流れの中で、 友との思い出は色あせる事などなかった。 「レック」 大樹の袂、小さな村の裏にある小さな森にエルディはいた。 質素な石がぽつん、とあるだけの、丸い丘だった。 花の季節だったからか、一面黄色い花で丘は埋め尽くされ、 エルディの足元にもたくさん咲いている。 毎日毎日エルディはこの花たちの世話をしてやった。 忘れないように、願うように、ただ直向に。 (結局レックにはなにも言ってあげられなかった) 謙虚な彼のことだ、今の言葉を聞いても 「別に構わないよ、エル」と言うだろう。 それでも、たった一言くらい、言ってやれたら。 「レック、…ありがとう」 一年間ずっと自分を探していたのだ。 心の根元は昔と同じレキウスだったのだ。 「ずっと忘れないよ、レック」 そっと花束を石の前に置くと、エルディは顔を伏せた。 視界一杯に咲いている黄色の花達がぶれる。 「ずっと、ずっと、俺はレックのことが好きだよ」 エルディは何度も心の内でそう呟き、 友との記憶が眠る丘でひっそりと声を上げずに泣いた。 黄色が眩しい花弁の上に、ぽつぽつと涙が乗っかった。 ****** エルディの涙は綺麗な方だと思った。 No.45 - 2007/02/02(Fri) 21:43:03 ********* ちから始まる物語 ちっとも変わらぬ村の様子に、そっとエルディは目を伏せ、 それからいつもの笑みを口に敷いた。 四年の歳月が経った今、 もはや昔の事など人々は覚えていない。 人の浅はかさも儚さも、全てを背負ってきたエルディも、 過去の出来事をふと思い出すだけに留めていた。 「エルディお兄ちゃーん」 「こら!走ってくるなって言っただろ?」 「あ、そうだった!ごめんなさい」 えへへ、と照れくさそうに笑う少女の後ろから、 数人の子供たちがやってきているのが見える。 エルディは昔の自分の面影を見ているように思えて、 人知れず心の中で涙ぐんだ。 子供達は今日も、エルディの冒険の話を聞くために、 わざわざ自分の家までやってきていた。 裏庭で取れたハーブの紅茶と茶菓子の用意をする エルディの服を引っ張るものだから、思わずよろけてしまう。 「エルディお兄ちゃん、お話を聞かせて!」 「そうだよそうだよ、冒険のお話聞かせてよ!」 「お茶の用意が出来たら話すよ。 だから良い子で待ってるんだぞ」 樹の村で体力を持て余している子供たちなのだ。 数人に一斉に引っ張られたら、エルディとて堪らない。 お菓子の皿をテーブルに並べ、紅茶を入れると、 エルディは椅子に座って子供たちを呼び寄せた。 「今日は何のお話なの?魔物を退治するお話?」 「じゃあ、世界を巡った時のお話がいいかな。 まだ皆は聞いたことないし」 「やったあ!」 居間の戸棚に仕舞ってある地図を持ち出して、 子供たちの前で広げ、エルディは微笑んだ。 それは、仲間のワッツから貰ったものだった。 「ファ・ディールの国の名前は言えるかな?」 「ここは砂の国ジャドよ」 「あっちは水の国トップル!」 「火の国イシュみっけ!」 「私、緑の国ウェンデルが好き…」 「氷の国ロリマー、だよね?」 地図に描かれた地形を指差しながら、子供達は一斉に口を開いた。 良く出来ました、と言うと、エルディは早速紅茶を飲んで話をし始める。 「巫女リチアが魔界の扉を開いてから、 世界にはタナトス、っていう悪い奴が溢れて…」 村長の家の煙突からは、穏やかな煙がもくもくと上がっている。 ラビのプックがぽん、と家の中に入っていった。 今日も今日とて、 マナの女神に愛でられたイルージャは変わらぬ美しさのまま。 リチアの愛した、あの頃のイルージャのまま。 *** うん、きっと二十歳になったら美人になるだろうな。 唐突にそう思って書いてみた。 世帯持ちには当分なれそうにないでしょうけれど。 No.46 - 2007/02/03(Sat) 19:52:39 ********* エルディ君とストラウドさん その2 ○月▲日 今日はレキウスと一緒に、 この間寝込んだストラウドのお見舞いに行きました。 行く途中でレキウスは矢の手入れをしていました。 どうしてやっているのかを聞くと、 「冥王が下手なことしないように、だよ。 後はエルディが危険な目に会わないように」 と笑顔で言いました。 俺のことを心配してくれて、レックは優しいな。 途中で仮面の導師さんと会いました。 どうやら果物を買いに行って帰ってきたところのようです。 レックと二人で挨拶をした。 「おやおや、お見舞いに来てくれたんですね。 ストラウドも喜ぶでしょう。さ…、どうぞ」 導師さんと三人で家までいきました。 貰った林檎はレックと二人で食べました。 冷えていて美味しかったです。 ストラウドは大した怪我はしていないようで、 俺はほっと安心しました。 一緒に来てたレックは舌打ちをしていました。 (しぶとい奴め…という声が聞こえたような?) 俺達は今日のアリーナの報告と会話を一通りしました。 途中で手とか肩を握られたりしたけれど、 ストラウドの手は冷たくて気持ちが良かったです。 あんまり無茶をさせたら可哀想だ、 とその時レックが言ったので帰りました。 思いっきりその眉間に皺がよっていました。 外に出る時振り返ったら、ストラウドに向かってレキウスが 炎(サラマンダーかな?)の矢を間違って放っていました。 仮面の導師さんは「微笑ましい光景ですね、」と 俺にお菓子とバナナを渡してくれた。 ありがとう、とお礼を言った。 それから二人を見て、顔を手で覆いながら 「エルディ君はもう行きなさい」 と言われて扉が閉められた。 一体どうしたんだろう? あ。そうだ、忘れる所だった。 「駄目ですよ、もっと火力がないと」 「こうですか?」 「そうそう、こんな感じ」 「…いい加減にし…ぐわっ!」 帰り道でこんな声を聞いた。 きっと料理か何かしてたんだろうな。 レックは料理が上手だし。 家から何だか煙臭い匂いがしていたけれど、 レックと仮面の導師さんは大丈夫だったんだろうか。 今日はラビの世話をしなくちゃならないので、 短めにしてみたんだ。 それでも長くなっていたけど。ちょっと反省。 No.47 - 2007/02/04(Sun) 17:13:33 ********* つから始まる物語 つまるところ、自分は間違っていたのだ。 夕日によって輝く水平線を見下ろしながらも、 グランスは海を見てはいなかった。 己のしでかしたことは世界を裏切ることだった。 「私も…老いましたか。 時は確実に過ぎているというのに」 妖魔化し、色の変わってしまった髪を手で触れ、 かつて友人と訓練に励んだ日々を思い出した。 思い出は思い出だ。ここは、己の場所ではない。 「覚えていますか、アニス…。 ここの夕日は、千年経っても変わっていない」 彼女と共に、よくここで夕日を眺めたものだ。 一歩間違えれば落ちてしまう危険な場所だといったのに、 アニスは少しも怯えなかった。 平和な日々がずっと続くと、人々が信じていた頃だ。 グランスの手に聖剣が訪れる前の頃。 魔界への扉を開いた所為で、アニスは妖魔に飲み込まれ、 聖剣でさえも闇に染まった。 死ぬのか、とグランスがふと思ったその時、 アニス自らが扉から魔界へと入り、向こうから扉を閉じたのだ。 絶望に支配されながらも、彼は扉を封じた。 その時になって、グランスはようやく、 自分も妖魔に染まっていることを知った。 しかるべき後継者に、己の知る真実を伝えねばならない。 妖魔となった体では、聖剣を握ることなど、出来ないのだ。 悟った彼は直ぐに自分を永い眠りにつかせた。 あれから早千年の時が過ぎた。 自分の体に閉じ込めていた時が軋みだし、ゆっくりと動き始める音を知っていた。 だからこれで終わりにするしかない。 「私は、光の中の闇だった。 エルディならば、光になることが出来る。 それだけのことだ。私には決められない」 グランスは紫の空を見上げ、静かに仮面の下、目を閉じた。 遠くで海の轟く音がしている。 千年前と同じなのは、夕日と海と、人の本質だけだった。 「所詮私も、崩れ行くのみ。 そうでしょう、アニス」 ****** 仮面の導師は色々と苦悩していたんだよ、という話。 偽者みたいだ。失敗。 No.51 - 2007/02/07(Wed) 22:08:49 ********* 拍手お礼文からの続き 長閑な昼下がり、ぽつん、と庭に置いた椅子に座って、 エルディは本を読んでいた。 靴を脱ぎ、素足に芝生が当たる感覚を楽しんでもいた。 時折木漏れ日が本のページに差込み、 きらきらと春の日差しを象徴している。 大樹の村から少し離れた所に、エルディの家は建っている。 だから(例えれば)身に衣服を一切纏わない姿でも、 誰も気に留めない。 エルディはふと本から視線を上げて、 家の中にいるもう一人の人物に声をかけた。 「こっちに来たら?気持ち良いし」 「俺は日差しは苦手だ」 家の居間で同じように本を読んでいるストラウドは 少し顔を顰め、苦々しく答えた。 そっか、とエルディは足を椅子の上に乗せた。 実際、本を読むのにもいい加減飽きてきていたのだった。 「じゃあ俺が行く」 「勝手にしろ。…ああ、俺の邪魔はするな」 「分かってる」 よいしょ、と椅子を持ち上げ、素足のまま、 エルディは庭を突っ切って玄関まで走った。 本を読みながらも、時折ストラウドがその様子を見ていた。 ****** 姉貴に「皆、幸せな兄と弟が読みたいのだよ」と言われた。 ので、早速書いてみました。 幸せ…か? No.52 - 2007/02/09(Fri) 20:09:12 ********* 静かな音 ぱたり、と音がした気がした。 死ぬ寸前、ラストシーン。それに流れるような。 青い目の先端についた何かが音を立てた。 その目線の先には自分がいるが、目の中にはいない。 「何を見てる」 なにも。そうか。なにもみてない。 嘘をついたことを悔い改めますたぶんあと数分後。 結局、ぱたり、という音は幻聴なのかもしれなかった。 でもその音を聞いた時、唇に羽が触れるような、 目に優しい手が触れるような心地がした。 もう一度、瞬いてはくれやしないか。 そっと静かに瞬いて、青い目の先にあるものをみた。 自分たちが見つめあっている何かが震える。 彼は目線を少し下にずらし、祈るように目を閉じた。 もうずっと髪を切っていなかったことを思い出す。 金髪のカーテンが世界を横切った。きらきらと。 彼の強張っている手がそれを上へと押し上げた。 ぱたり、と音がした。 「俺を見ろ」 ぱたり。瞬きひとつ。訪れる衝撃に備えて目を閉じる。 静寂の世界で自分たちの脈拍だけがリズムを打った。 どくんどくん。少し煩い。それが心地よい。 ベッドに無理やり倒されて髪が下敷きになった。 昼間からやるのもどうかと思った。 きっと移動するのが面倒臭いだけだとも思った。 ****** ぷらとにっく。そんな兄と弟。 瞬きの音は軽い音がしそうだと思った。 No.53 - 2007/02/10(Sat) 06:00:17 ********* ひとこと、 愛とは、なんたる残酷なことか。 愛すならばすべて受け入れろというのか、 世界すべてを受け入れろというのか、 お前は一体なんのために生まれてきた。 ああそうだ愛とは、 No.55 - 2007/02/12(Mon) 08:35:34 ********* 書いたら更新に追われる季節もの 上からエルディ、仮面の導師、レック。 一行空いてるのはストさん。 「今日は暖かいなー」 「そうですね、もうそろそろ春でしょうか」 「三寒四温って言うし、まだかもしれないね」 「おい、」 「なに?」 「なんですか、」 「…あぁ?」 「俺は無視か」 「え?そんなつもりないけど」 「被害妄想ですか。嘆かわしい」 「所詮お前は最弱だろ」 「だいぶ温度差がないか、コメントに」 「温度差?コメントに温度なんかないぞ」 「おや…。恐らく貴方の気のせいですよ」 「馴れ馴れしくエルディに語りかけるな、迷王」 「………」 「へへ、実は俺今日のためにサンドイッチ作ってきたんだ!」 「では早速頂くとしますか。さ、レジャーシート敷きますよ」 「エルは一番暖かいところだね。はい」 「………」(一人取り残されてる) 「んーおいしい!やっぱり外で食べると格別だよ」 「天気も良く、風もありませんし」 「だね。本当に今日は外に出て正解、正解」 「………」(入りたそうにしてる) 「もぐもぐ」 「焦らずにゆっくり食べて下さいね。 のどに詰まったら大変ですから」 「……」(ストラウドに向かって絶対零度の睨み) 「!!」(そんなレキウスに驚愕) 「ストラウドは良いのかな」 「大丈夫ですよ。きっとお腹がすかないんです」 「だね。エル、持ってきたお菓子食べるかい?」 「………」(結局仲間外れ) **** がんばれストラウド!きっと明日は最強さ! 花見してる四人組みが書きたかっただけ。 面白い小説を書けるようになりたいな。たいな。 にょき! No.57 - 2007/02/14(Wed) 20:45:18 *********