空気を切り裂く、 ビシッ、と嫌な音と共に、右頬に激痛が走る。 恐る恐る左手でそっと触れると、血の滑る感覚。 目を顰め、ぎり、と左手を握り締める。 自分がすっかり油断していたのが許せなかった。 (…くそッ!これだから吹雪はイヤなんだ!) 目の前を通過する氷の弾幕を睨んでも仕方ない。 傍に落ちていた銃を拾い、雪を払い落とした。 これだけふぶいていれば寒いはずだが、 不思議と寒さは一切感じない。 (いける) 「さあ、かかってこい!」 吐き出した大量の息は白く濁って辺りに散った。 ****** FF12のヴァン、聖剣伝説4のエルディ…の中間的なキャラで。 どちらでもこれは一応いける。 最初は舌打ちさせていたけど、 それはバルフレアの専売特許だなあ、と思って止めさせた。 No.493 - 2010/02/23(Tue) 23:41:55 ********* 過去から愛しています ※「輪廻」「生まれ変わり」「ジャンル混合」注意!  前半は幼いバルフレア(FF12)とヴィルア(創作)、  後半は七年後設定(FF12)のファムランとヴァンです。        ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 穏やかな昼下がり、柔らかい光。 俺のことを知らない幼子の頭をそっと撫でてやる。 まだ力のことなど何も知らず、 これから訪れるだろう困難のことさえ気づいていないこの子。 愛しく思えるのは、かつての相棒の面影が残っているから? いいや、違う。きっとこれは宿命なのだ。 (何度生まれ変わっても、ずっと俺の目は君に向かい、 君は俺を見つけ出す) どうか宿命に負けないでおくれ、愛しい子。 運命に打ち勝ち、自由を勝ち取って幸せに――。 「ヴィルア、そろそろ…」 「…ああ。ありがとう、もう十分だ」 苦い顔をしたエルディに連れられ、その部屋を後にする。 未来に飛ぶのは本当はご法度だ。 それなのに、 もう余生が少ない俺の為に、エルディは無理をしてくれた。 未来でも彼は生きている、それを知ったからもう十分だ。 この世界に再び生れ落ちて、もう一度彼と巡り会うのを楽しみに待とう。 そして今度こそ言ってやろう、君はとても凄い人間だったと。 ****** ふと、目が覚めた。 懐かしい夢を見ていたような気がしたけれど、 何も思い出せなかった。 なんとはなしに 隣のベッドで寝ているファムランの横顔を見てみる。 無表情な寝顔はどことなく幼く見えた。 (…『出会うことさえ宿命』) 俺たちは、生まれ変わる毎に必ず不幸に見舞われ、 苦しい人生を歩まされる。 二人とも呪われた運命に縛られているのだ。 それでも、未だに抗い続けている。 ファムランは俺が「全て」を思い出していることに、 まだ気づいていない。 だから彼に対して慈しむような視線を向けられるのは、 彼が眠っている時しかない。 (この複雑な心中を知った上で、 あんたは運命など戯言だと笑い、俺の手をひっぱるんだろう) これは愛?それとも慈悲? ********* ヴィルアとヴァンは同じ心境。 七年後設定のヴァンがかなり大人びていることに気づきました。 あのやんちゃっぷりが一転、 しっとりとした雰囲気の美人になるなんてびっくりですね!← No.537 - 2010/06/05(Sat) 15:20:10 ********* 天使と悪魔 昼の日差しがところどころ差す薄暗い回廊を、 無垢な存在が何かから逃げている。 でも、その無垢な存在は決して幼くはない。 強くしなやかな存在で、 逃げる足取りはとてもしっかりとしている。 その視界は走っているからぶれているけれど、かなり明瞭だ。  回廊の床は白いマーブル模様の大理石で、『彼』は裸足だ。 長い間逃げられない。 それでも大丈夫、『彼』はしっかりと逃げ道を把握している。 でも急がなければ追いつかれてしまう…。 一体彼は何から逃げている?  彼の目にはっきりと恐怖を抱かせる存在はなんだろう?   いや、彼にはきっと守るべき人がいたのかもしれない。 回廊はかなり広いが、 ところどころ曲がりはすれど分岐は殆ど無い。 ヴァンはそもそも何故素足なのだろう。 そして、白一色の衣装で逃げ回っている。 天使?いいや。 途中なんども振り返りながら、 彼は先の見えない回廊を只管逃げ続けるのである。 足には自信がある。ああでももし追いつかれたら! そう思うとゾッとした。 ********* ちなみに、この無垢な存在、実はヴァンでした。 でも七年後の大人びた姿でした。どういうこったい。 ※急遽ついったーから移植したものです。 No.538 - 2010/06/14(Mon) 22:46:42 *********