本と埃 床に落ちていた、大分古びた本を拾い上げてみた。 すると、 ページが次から次へと抜け落ちていってしまって、 慌ててそれを拾い集める。 まさか、こんなに古ぼけていたなんて、 想像もしていなかった。 「あんたが来るから、もうちょっと保存状態がいいと思ってたのに…。 ここ、かなり古臭い場所だ」 「期待が外れて残念だったな」 図書館だったらしい室内は常に埃が宙を舞い、 日光がその様を幻想的に見せている。 幻想的だが、 咽そうになる黴臭さと埃っぽさはどうにもならない。 マフラーを鼻まであげて、本棚に梯子をかけ、 手袋をして慎重に何冊か本を抜き出していく。 ゆっくり、優しくやらないと、 すぐに破けてしまいそうな古書しかここにはなかった。 「本当に使えるんだろうな、これ」 「資料が少ないからな、どんな情報でもほしいんだ。  たとえそれが古いものでもな」 目の前をちらほら横切る灰色の埃と、 手元にあるぼろぼろの本数冊を見比べ、こっそりとため息をついた。 ********* 現代パロか、それとも原作か。 ふっと思い浮かんだものを書き留めてみた。 深く考えないで読んでください。フィーリング。 No.254 - 2008/09/24(Wed) 18:52:12 ********* 偽葬 死後硬直が始まった体はやけに重く感じた。 棺の中にはむせ返るような花の匂いが充満しており、 色とりどりの花束がそこに添えられていた。 持ち上げた体は、やはり、冷たかった。 硬く握られた拳を指でなぞってみたが、 生前となんら変わらないように思えた。 死んでいるのかどうか疑ってしまうほど、 彼は安らかな最後を迎えたようだ。 遺体を棺に入れ、硬く閉じられた目蓋にそっと人差し指を置いた。 はっきり言うと、まだ迷っていたのだ。 無理矢理にでも生存させるのか、 それともこのまま永劫の眠りにつかせてやるのか。 彼の顔は穏やかな笑みが口元にしかれ、 幸せ極まりないといった雰囲気だった。 ゴーン、と、恐らく最後の時を知らせる鐘の音が鳴り響いた。 もう時間が無い。 出来れば自分はこの人を生かしたかった。 ゴーン、重たい鐘の音がする。 あと七回。 棺を閉めようとする手が動かない。 置いていかれるのはもう嫌だ、と思った。 でもきっと彼は不服そうな顔をするだろう。 だけれども。 ゴーン。 鐘の音が、煩い。 ゴーン、 「あんたは俺を馬鹿だと言うだろう」 ゴーン、 「でも俺はあんたを見捨てることだけはしたくなかった」 ゴーン、 「だから、許してくれよ、」 ゴーン、 「これで最後にするから」 その時、体に温もりが戻ってくるのを感じた。 震える手で棺を開け、傍に座って覗き込む。 ゴーン、 目が、開いた。 ゴーン、 「どうしたんだ、ヴァン」 ********* バルフレアが死ぬ夢をみた…時の続きの夢。 何故誰もいないのかとかヴァンがちょっと違うとか まあ夢なので深く追求しないでくださいね。 No.270 - 2008/11/27(Thu) 18:41:32 ********* 燃え上がった刹那の願い (この想いが燃え尽きる前の願いだ) (どうか、叶ってくれ…) (あの時、あの場所で、彼の立場を、俺に…) (頼む、頼む、叶ってくれ!) (それが叶ったら、俺の全てが燃え尽きてもいい) (俺は、俺たちは、このままでは、死に切れない) そして俺たちは最後の夢をみた、 最後の夢を見終わった俺を待ち構えるのは、 安らかな終焉と、静か過ぎる眠りだと知っていた、 これでいい、これでよかった、 そう思うだけしか、時間は残っていなかったのだ、 (あ  あ、燃え、尽き て、 い   く ) (さよ  な ら    フ    ア ) ********* 随分前に書いたログ「燃え上がった刹那」の別視点。 ちなみにLディじゃありません。 この話を長編でちびちびと書き進めてみたい。 No.279 - 2009/01/06(Tue) 18:43:20 ********* 幻想に好かれる男 前髪の長くなかった昔は両目を見せていたんだ。 歳をとって、何時頃からかは分からないが、 片目だけを出すようになったんだよ。 「…? でもどうして片目だけにしたんだ?」 「……」 パレットから色をとり、さあ塗ろう、 という体勢でエルディの手が止まった。 場違いな質問か、そうでなければ 心の古傷に関わるような質問をしてしまったらしい。 異変に気付いたヴァンは慌てて手を振った。 「あ、ああ、言いたくないなら構わないよ、エルディ」 「言いたくない訳じゃないんだけど」 エルディは一瞬躊躇してからヴァンに向かい合い、 前髪を掻き分けて両目を出した。 「ヴァン…幽霊って信じてる?」 「…幽霊?」 ぼう、として数秒、 エルディは恐らく、幽霊が見えることを信じるか? ということを言ったのだろう、と気付いた。 つまり、エルディには見えている。 「あ……そうか、見える、のか」 「ああ。稀に。右で見えるんだ」 「だから右を隠してたのか、なるほど…」 片目を隠すなんて戦闘においては不利な髪形だが、 エルディはあくまで「中立的」立場の人間であるから、 意味がないのだろう。 ましてや、辺鄙な廃城に閉じこもって 絵を描いているだけなら髪型など気にする必要はない。 「そうかあ、エルディも、幽霊見えるのかあ」 「…え、ヴァン、見えたのか?」 呟きが聞こえたらしく、 エルディは珍しく感情を表に出して、 意外だ、という表情をしていた。 それを見て、ヴァンもあれ、と頭に疑問符を浮かべた。 「エルディには言ってなかったか?」 「言ってない。今ので初耳だ」 「話してくれてありがとう。  エルディと俺に意外な共通点が見つかって良かったよ」 「そうだな。あんまり喜ばしくない共通点だよ  幽霊が見えるなんてものが共通点だなんてね」 暫く無言でいたあと、二人は同時に噴出した。 嬉しくないなあ、全くだ。 ********* エルディとヴァン。 リハビリ    かもしれません。 No.335 - 2009/07/17(Fri) 17:26:49 *********