こから始まる物語 殺される感覚は実際にそれを体験しなければ分からない。 そりゃ痛いだろう、恐怖と絶望の怒涛の流れが脳内を駆け巡り、 説明出来ない程の感覚が体中を覆うのだろう。 尤も…被害者であったならばこの場にはいないが。 瞑想とまでは行かないまでの、 ちょっとした考え事に耽り、らしくなく眉間に皺を寄せる。 人間思い詰められたら、 何をしでかすか分かったことではない。 ここ最近、気が付けば何かを考えている気がする。 思い出であったり、哲学的なものであったり、 今晩の献立とかであったりと様々な事を考えた。 その奇妙な日課を何時から始めたか、あまり覚えていない。 それが普通ならば、別にいいのだけれども。 「おい、お前ちゃんと聞いてるのか」 「へっ!?な、何?」 今日も、今回も、 ぼんやり、とし過ぎて偶に意識が飛んでしまっていた。 瞳の焦点を慌てて合わせると、 不機嫌そうなバルフレアがこちらを向いていた。 折角二人きりになれたのにつれない奴、といった様な顔。 拗ねた(と言うには年を食いすぎているけれど、)バルフレアは大変扱いにくい。 素直に謝ってやっても素っ気無い返答を言うだけ、 かと言って無視すれば更に機嫌を悪くする。 ぼう、としている俺が悪いのだろうけれど。 殆ど癖のようなものなのだし。 ああ、気まずい。 No.26 - 2007/01/08(Mon) 02:31:04 ********* リハビリ 久し振りに泊まった宿屋で、久し振りのベッド。 最近はお金にも余裕が出たので少し奮発してみた。 一足先に身体を洗った俺は、ベッド脇に置いてあった水の瓶を手に取った。 交代しろよ、と隣で目を閉じているバルフレアを揺さぶった。 「バルフレア、…バルフレア」 あれ。もしかしたら。いやもしかしなくとも。 丈夫な寝台にワイシャツ姿で横たわったまま、 バルフレアは穏やかな寝息をたてていた。 「寝顔ってなんだか新鮮…っぽい」 普段は異様なほど早起きするもんだから、 いつも起きた後の不機嫌そうな顔しか見た事がなかった。 きっと疲れてたんだろう。 (普段と違って不細工な寝顔ー!) くすり、と起こさないように笑った。 水をコップに注いで一口飲み、 浴室から持ってきたタオルで髪を拭く。 ちら、と隣で寝入っている横顔を覗き見た。 見た目は思いっきり爆睡してるようにしか見えない。 (バルフレアのことだから、狸寝入りって可能性もある) 振動が伝わらないようになるだけゆっくりとベッドの上に乗っかり、 バルフレアの髪を退ける。 暗い室内ではよく顔が見えないから、 そっと顔を近づけて覗き込もうとした。 が。 「…ッ!ほら見ろ!やっぱり狸寝入りだ!」 「悪かったな。あいにく気配には敏感なんだ」 「あんまり驚かせるなよ…寝ようとしてるんだから」 予想通り、バルフレアは突然目を見開いた。 お陰で俺は「わっ」と変な声を上げて驚いてしまった。 一方、バルフレアはにやり、と笑っている。 「そうつれなくするなよ」 「本当に俺今日はくたくたなんだぞ」 「俺も疲れてんだ、お前同様やる気はない」 じゃあ何で未だに俺の腕、離さないんだよ。 遊び道具をもらった子供の目をしたバルフレアは、 深緑の目をきらりと輝かせて再度笑った。 (俺がその悪戯するような目が苦手なのを ちゃっかりバルフレアは知っている) 「添い寝してやろうかと思ってな。ほら」 「だから俺は子供じゃないって、…ああもういいや。  今日だけ特別に甘えておく」 「素直な子は好きだぜ、ヴァン」 身体を洗うのは明日にしておく、とバルフレアは目を閉じた。 俺は言う通りにその隣に入り込んで目を瞑る。 もちろん、密かに尻を触っていたバルフレアの手を、 思いっきり抓ってやるのも忘れずに。 *** セクハラバルフレアとしっかり者のヴァンのお話。 No.42 - 2007/01/31(Wed) 16:20:05 ********* てから始まる物語 天気の良い、快晴の空の下で、ヴァンは勢いよく海に突っ込んだ。 その様子を浜から眺めていたバルフレアは 静かにため息をつき、涼しい木陰で流れ出た汗を腕で拭った。 思わず眉間に皺を寄せてしまうほど、 海岸の気温は暑く、蜃気楼がゆらゆらと揺らめいている。 「あちぃ……」 このままいたら俺の頭が可笑しくなっちまうな… 水を弾いて光を乱反射させながら遊ぶヴァンの姿を見ながら、 バルフレアは眩しい青空を見上げた。 ぼう、と何処か惚けた頭が、ただ熱かった。 「バルフレア、バルフレア」 「…そう何度も呼ぶな。ただでさえ暑いってのに…」 「そんなに暑いっけ…?  俺がいたラバナスタの方が暑いぞ」 潮臭いや、と自らの肩に鼻を擦りつけながらヴァンは笑った。 バルフレアがたじろぐと、ヴァンの腕がその手に当たった。 長い間海に浸っていた腕はひんやりとしていた。 炎天下の中、真っ青に透き通った海と、 冷え切った細身の体だけが涼しい。 「あー……まいった」 思わず右手を目に翳しながら天を仰いだバルフレアに、 きょとんとしたヴァンが歩み寄る。 足元で波がゆっくりと引いていき、大きな音がした。 ざあ、と何処と無く胸の落ち着く音を聞いて、 バルフレアはヴァンの肩を抱いた。 「ば、バルフレア?」 唐突に抱きつかれ、ヴァンは焦ったように男の肩を手で押した。 手で押しても、バルフレアは開放せず、 むしろ形の良い顔を肩により強くくっつける。 どきり、と思わず動きを止めたヴァンの耳に、 心地良い波音が聞こえた。 「お前の肩が丁度良いくらい冷えてるから、  抱きたくなっちまった」 その言葉を聴いたヴァンは、さっと頬を赤く染めた。 ****** 青春真っ盛りな二人、フォーン海岸にて。 たぶん経験値山分けする為に二人だけなんです。 実はあんまり構成を考えなかった。(告白) この二人、いちゃこらしてても似合うn(強制終了) No.76 - 2007/03/14(Wed) 12:58:45 ********* リハビリ 最近それっぽいのを書いてなかったので。 ****** 部屋にある唯一つの照明は暗く、 きらきらとそれが青い目の奥で反射する。 やる事自体は酷く浅はかな行為なのかもしれないが、 それでもやりたくなったもの勝ちだ。 (俺はこの色が好きだ。見てて一番安心する) 日に焼けて褐色になった肩の、 ひどく滑らかな触りの肌へと顔をくっつけて俺はそっと息を吐いた。 今日一日、嫌なことがあったわけじゃあない。 愛する奴と一緒にいることが嫌なわけじゃない。 ただ何となくでため息が出ちまったんだ。 あーあ、俺という男は。まったく。 「え、なに、なんか言った?」 「いやなんでもない。独り言だから流せ」 潜りこんだシーツは洗いたてで、洗剤の良い匂いがする。 あいにく、今日は何もする気がしない。 それは俺の隣で寝ようとしてる坊主も一緒なのだ。 「もしかして、なんか嫌なことあった?」 「いや、ねえよ。ただ何となく出ちまった」 「なら良いけどさ」 んしょ、と間抜けな声を出し、ごろりと寝返りを打った。 時間帯から言って今から熟睡できるかは分からない。 寝ないよりはマシだとは思うので、寝る。 一緒に寝る、何て素敵な状況なのは、俺が一番良く知っている。 でも体力も気力もゼロになってやがる。 あー、俺という男は本当に、運が無いねえ。 「バルフレア、ちょ、肩に頭押しつけるなって」 「ん…悪いな」 「だ、だから!髪が!くすぐったい!」 まどろみ始めた思考の端で、あーあ寝ちゃったよ、と ため息をつく声が聞こえた。 何でこいつの肌は、こんなに肌触り良いんだろうか。 眠い。 No.82 - 2007/03/22(Thu) 18:51:58 *********