随分前見た夢が、 下記のような内容だった。 ――― 白亜の大理石の壁で飾られている、 広い宮殿の通路をヴァンは歩いていた。 ぽつん、としている。誰も居ない。 小鳥が囀る音だけが響いている。 (不気味だな) 「おい、あと少し進め」 (こいつも、不気味だ…) コツコツと音を立てて 自分の目の前で歩いていく軍服姿の男が言った。 慌ててその後をヴァンは追った。 けれど、何故か嫌な気分にはならない。 それどころか、どこかワクワクとさせるように思える。 何故か、ヴァンにとって、 この男の声が酷く懐かしくてたまらない。 (何故だろう、俺、こんな所知らないし、 こいつも知らない) けれど、ついさっきこの場所に連れて来られた時、 (バルフレア、バルフレアだ…) と心の中ではっとしていた。 バルフレアなんて誰だろうか。思い出せない。 「ここだ。暫く待てば飛空挺が来るだろう」 「あ、ああ」 Uの形になっているテラスに着いて、 軍服の男が初めてこちらを見た。 白い大理石の柱―ロマネスク様式の柱の中で、 男の目の翡翠は異様に美しく見える。 同時に、あっと小さく声をあげたヴァンは、 その男を凝視した。 「バルフレア…!」 ―― この十倍の量を長い間書き続けていられたのは奇跡。 その内纏めてアップするかもしれない。 No.4 - 2006/11/11(Sat) 08:12:18 ********* 思いつきでどの位書けるか 「構わないのか」 「何が?」 夕闇に包まれている荒野を見ながら軍服の男が言った。 男の左隣に、影のようにひっそりと彼は仕えている。 そして彼もまた男と同じ軍服に身を包んで立っていた。 「どの道こうするしかなかったかもしれないだろ」 「……どうだかな」 「生き残ったって、つまらないし」 男は大剣を背負った背中を凛とさせたまま眉をしかめた。 何処か遠くで血生臭い戦争が起こっているからだろう。 かつて自分が体験したのと同じだ、と青年は思った。 戦争というのは何時の時代も残酷で素早いのだ。 「きっとお前も俺も明日は死ぬぞ」 「知ってる」 「それでも来るか」 「行くしかない」 ふ、と小さく男が嘆息を漏らして憫笑した。恐らく自分に。 青年はホルダーの中に収まっている双銃の重みと、 男の胸中を感じながら目を閉じている。 二人は共に、幼い頃に生死の危機なんぞ幾らでも体験していた。 「奈落の果てまで一緒に落ちるか」 男が打って変わって優しく青年に笑いかけた。 夕日による逆行で表情は見えない。けれど青年はそう感じた。 「今まで一緒に来た。……一緒に死ぬぞ」 「……バルフレア」 間の抜けた鳥の鳴き声がしていた。 ――― つまりは死地へ赴く最後。 あんまりすぎる。 No.6 - 2006/11/12(Sun) 18:12:39 ********* 随分前見た夢の続き 拍手にて続きが見たい!との要望がありましたので ――― 「バルフレア…!」 「……」 「あんた、どうして…」 今までぼんやりとしていた記憶が全部、 くっきりと思い出されたのである。 イヴァリースという世界で冒険し、 暮らしていた時の記憶である。 バルフレア、とヴァンが呼んだ時、男は何も反応をしめさなかったけれど、 白亜の建物で二人しかいない心細さはさっとヴァンの心から消えてしまった。 自分は生贄としてここに連れてこられ、 おまけに見たこともない土地なのだ。 17歳という歳は、未知という恐怖に逆らえるような年齢でもない。 「バルフレア、俺…ヴァンって言うんだ」 「…ヴァン。俺の言うことを聞いてくれ。  …ほんの少し黙ってろ、全て上手くいく」 嬉しさに飛び跳ねそうに喜ぶヴァンを鎮め、バルフレアはそっと目を閉じた。 同時に、向こうからとんでもなく大きな飛空挺が こちらへと旋回するのが二人に見えていた。 とてつもない恐怖と緊張を覚えたけれど、 必死にそれを抑えてヴァンは立っている。 バルフレアが素早く首に何かを着けた。 きっとネックレスか何かだ、とヴァンは思った。 ウーン、ウーンと警告音のような起動音を立てながら、 飛空挺は紺碧の海とまっさらな大空の中を進む。 突風が吹きぬけるデッキの上に、独り、ヴァンは座り込んでいた。 数十分の内に巻き起こった予想外の出来事に、 身体がじっとしていられなかったのだ。 ヴァンをここまで案内してきた男―バルフレアは 今も自分の傍の手すりに身を預け、大空を見上げている。 話し掛けたい衝動がふつふつと沸いてきても、 先程バルフレアに言われたようにヴァンは黙っていた。 (バルフレア、俺、どうなるんだ?) (俺、死ぬのか…?それとも、ちゃんと、脱出できるのか?) バルフレアはちっとも喋らなかった。 バルフレア、とヴァンは心の中で何度も何度も彼に語りかける。 そうしないと、未知への恐怖で胸が一杯になってしまい、 冷静に事を処理できなくなるからだ。 数分彼の横顔をじっと見つめている内に、ヴァンは自ずと、 (きっと…バルフレアは俺を助けてくれる) と確信を持って思えるようになり、張り詰めていた緊張を解き解いた。 たとえどんな窮地に陥っても、 きっと目前に悠然として立っているバルフレアが助けてくれる。 何故か(そしていつの間にか)そう思えてきたのだ。 きっと大丈夫だと。 No.5 - 2006/11/12(Sun) 14:02:22 ********* 前世パロディ 長い名前だな、と男は言った。 だけど希望が籠められてるな、とも俺の目の前の人は笑う。 母さんは今後一切この名前を他人には漏らすなと言ってた。 唯一だと思える人にだけ明かしなさいとも。 「エルヴァーン…か、長いな」 「だからどうしたって言うんだよ」 「短縮してみるか。もっと簡単な名前をな」 きらきらと初夏の陽光が屋敷の外で輝いている。 綺麗に磨かれた窓ガラスに、俺の金髪碧眼が映っていた。 誇るべき家名は俺と母さんにとって屈辱だった。 母子共に今まで虐げられてきたからだ。 『さあおいで、私の息子、エルヴァーン』 『これからはヴィルアと名乗りなさい、  貴方は生まれ変わるのよ、もう虐められないわ』 母さんは悲しげに笑って俺をここへ預けた。 唯一の肉親(父さんは俺が5才の時戦死した)と別れる、 そう聞いて俺は母さん!と小さく叫んだ気がする。 日向に立った母さんは今度は幸せそうに微笑んだ。 その2年後に母さんは肺の病気で亡くなった。 「ヴァン、なんてどうだ」 「…それはどうも」 「可愛くない弟子だなお前は」 男の翠の目がそっと笑みで細められる。 二刀流の師匠であり、 俺を引き取った家の長男である彼は良く笑う。 羨ましい、と思う。俺はそんな風に今まで笑えなかった。 「もっと笑った方が良いな、ヴァン」 「アンタみたいに俺は気楽じゃないって」 「笑える内に笑った方が良いさ」 そう言ってファムランはまた笑った。 ――― 前世でのアホの子とバルさん。(馬鹿) No.8 - 2006/11/14(Tue) 18:30:32 ********** けから始まる物語 蹴られたら蹴り返す、程度の覚悟でいなければ、 恐らく明日には殺されているだろう。 現実から目を逸らしたい訳では無かったが、 ぼんやりと手当てがなされていくのを見ている途中で、 ふと感慨深く自身の傷に触れた。 刺激を与えるな、と隣に立っていた人物が 気を使ってその傷に軟膏を塗りつける。 「また出血多量で倒れたいか?」 「それは嫌だけどさ」 ピリ、と右腕と左足を走る痛みに顔を顰めながら サイドテーブルに置かれた聖書を手に取った。 別に信心深くない人間にとってはただの流し読みの為だけにある、 分厚い本は湿気ていた。 当然だ。 この部屋の主は神に対して縋り付くことはしない自由気侭な男なのだから。 「無茶した、っていうのは分かってるし」 「なら安静にしてろ」 「けどさあ、」 まだ何かを言おうとしたが、口喧嘩で勝てるとは思えず、 沈黙することにした。 黙っていても不機嫌ではなく、 ただぼんやりと聖書の中の文章を読んでいく。 「後先考えないからこうなる。分かったか?」 「……まあ、一応」 「俺が医者の経験なかったら、今頃は墓の中だ」 普段あまりこの部屋にいないからか、設備は最低限、 食料も一人分しかないらしい。 食べる物買ってくる、と財布を取り出した男は眉間に皺を寄せていた。 怪我人は大人しくしてろ、ああそうだ部屋は漁るなよ! 「だから動けないって言っただろ?」 聖書を捲っていた指を止め、静かに青年は苦笑いを浮かべた。 *** リハビリ。現代パロでバ ルさんとヴ ァン。 あるジャンルに影響されてる影響されてる…! No.25 - 2007/01/04(Thu) 15:03:16 *********