塞がれた視界の中で、私は一つ、二つ、瞬きをする。
無理やり口に入れられた物体の所為で、呼吸が上手くできない。

「ぅん…っ」
「ダメですよ先生、ちゃんと舌を動かさないと」
「そうは…言われても…」

今の私はシャツ以外は何も身に付けていない。
それはつまり、ルークから見ると恥部まで丸見えになっているということだ。
既に体の関係を持っている私達にとっては今更という感じは否めないが、恥ずかしいものは恥ずかしい。
視界が奪われたために上手く拭いきれない唾液が、ゆっくりと口元を流れていった。

「ん、む、…ふ、っ」

そもそも、始まりは恐らくベッドに押し倒された時の、あの会話が原因だろう。
一刻も早くこの体勢から脱したい一心で舌でルーク自身を慰めながら、私はぼんやりと回想した。

***

ぼすん、と音を立てて私はベッドに押し倒されて、ルークを見上げる。
照明を落としきった室内に、青い月の光が入り込んで美しい夜だ。
私から見たルークは逆光の中だったが、夜目でも分かるほど真っ赤になっていた。 何度も行為自体はしているのに、ルークのそういうところが私は好きだった。

「…ルーク、君は私とセックスをしていて気持ち良いかい?」
「なんですか先生、いきなり。気持ち良いし幸せですよ、僕」
「そうか、それなら、いいんだが…」

言葉を濁した私に、ルークは怪訝な顔をする。 既に私の服を脱がし始めていた手が止まっていた。
これは、少しまずいかもしれない。私は直感的に悟った。
ルークは普段大人しくて賢い子だ。が、どうもリミッターが外れると加減を忘れてしまう。

「まさか、先生は気持ち良くないっていうんですか?」
「そんなことはないよ、ルーク。ただ君が、私で満足してくれてるかどうか不安で…」

普段通りに行為をするかと思っていた私に、ルークはにこりと微笑む。 どこか歪な雰囲気を持っているそれに、私は息を呑んだ。
ああ、まずい!どうやら私はリミッターを外してしまったようだ。

「…じゃあ、今夜は僕の望むようにセックスをさせてくれますよね?」

***

「せ、んせ…上手いですね…」

舌でそのまま愛撫していると、頭をルークに撫でられた。
目隠しだけならまだしも、両腕を背中の後ろで拘束されて自由に動けるのは足だけだ。
これがルークの好きなやり方、なんだろうか。

「も、ういいですよ、先生。そのままじっとしてて下さいね」
「るー、く…?」
「あ、先生が痛がることはしませんから大丈夫ですよ」

そう言うとルークは私から離れ、酷使して痺れてしまった口を人差し指でなぞった。
冷気と視線に晒されて、自然と体が火照り、じわじわと熱がそこまで来ている。
見えない闇の中では敏感になってしまって、私は顔を伏せた。
普段通りなら、ルークはこんな風に私だけ恥ずかしい思いなんてさせない。
それなのに…。

「僕のを咥えながら興奮したんだ…」
「ち、違っ」

いつの間にかルークが背後に回り込んでいて、背中に、腰に口付けられる。
彼の目の前で私のそれが露わになっているのが恥ずかしかった。
ルークはあくまで優しく私の体をそっと倒す。
剥き出しになった両足がシーツに押し付けられた上半身を支えるような体勢になった。

やんわりと両手で私自身を包まれて、私は赤面し、頭を振った。
きちんと服を着ているルークに比べ、シャツだけを羽織る私の姿は滑稽以外の何物でもない。
羞恥に苛まれる私の首筋にキスを落とすと、耳元に囁かれる。

「大丈夫、僕、いやらしい先生も好きですから」
「ルーク、待ちなさ…ッ!」

つぷり、とローションを塗りたくった彼の指が私の中に入ってくる。
彼の表情など分かるはずもないのに、彼が目を閉じているのが分かった。
液体の冷たさと、熱い指先の感覚、が。


「は、ぁ…!ぁあ、ん、あっ」
「すごい。ぐちゅぐちゅしてる」
「あ、ぁ、見な…いで!」

徐々に指を増やされて、快楽に弱い私は頭が真っ白になった。
ルークに喘ぐ姿を見られているのに、感じてしまう、なんて。信じられない。
体勢を支えている両足があまりの快楽に震えている。

「せんせい、そろそろ…いい、ですか」
「、んっ…」

自由にならない視界のまま、ルークが分かるように頷く。
彼が服を脱ぐ間、私は荒い息のまま彼を待った。
そして、

「ふ、あ、ぁ…ッ!」
「ちょっとキツイです…。先生、力抜いてください」
「あ、あ…」

ルーク自身が私の中で大きくなって、ああ、ダメだ、くらくらする。
何とか意識が飛ぶのだけは避けていても、快楽でどうにかなってしまいそうだ。

「は、あ、ああっ!るーく、るーくぅ…っ!」
「レイトン、先生っ」
「おねが、…目隠し、取って、…ルークが、見た、い…ッ」

上下に揺さぶられながら懇願すると、するりと目隠しが取れ、視界が開ける。
狂おしげに私を求めるルークの顔を見て、熱が膨れ上がった。
私は彼を愛しているのだと、改めて確認した。

「―っ!!」
「あ、あ、あああ―ッ!」

どくりと奥に放たれた彼の熱を感じながら、私もまた達した。

***

どこか甘く怠惰な空気の中で、二人でシーツに包まって眠る。
致した後、流石にやり過ぎてしまったとルークも反省したらしい。
拘束をすぐに解いた後、ゆっくりと時間をかけて後処理をしてくれたから。
あまり強く締めていなかったものの、腕には少し跡が残ってしまった。
ルークはそれを見て酷く落ち込み、私を不安げに見つめている。

「あの、気持ちよかったですか、先生?」
「あ、ああ…。でも…まさかルークがあんなことをしたがっていたなんて。少し驚いたよ…」

そんな彼に微笑みながら言うと、ルークはぽっと頬を染めた。
行為の最中はあんなに大胆になるのに、こういう所は初心で可愛らしい。
私はそっとルークの鼻に口付けた。

「…そうだね、時々なら、こういうのも構わないよ」
「本当ですか!」
「その代わり、ほどほどにするんだよ」

ルークは新しいぬいぐるみを手に入れたように嬉々として私に抱きつく。
私はその様子を見ながら、果たして大丈夫だろうかと少し不安になった。
数日もすれば、分かるだろうか。

そういう試みも大事だけれど

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