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「デスコール!」
勢いに任せて床に押し倒すと、どこか慌てたように彼は私の名前を呼んだ。
ことを強引に進めようとする私を怒ったのかと思ったが、そうでもないらしい。
どこか困ったように眉を顰めて、彼を押し倒した私を見上げている。
遠目で見ていると表情が分かりにくいが、至近距離で見ていると彼の表情は実に分かり易いものだ。
たとえ遠目だったとしても、雰囲気や声といったそういうもので見分けがつく。
よく見れば、ほんの少し彼の頬が赤くなっていた。
「いいだろう、エルシャール?」
「よくないに決まってるだろう…!誰か来たらどうするんだ!」
ここは彼の自宅だが、だからといって人が来ないわけでもない。
大学の生徒から慕われている彼の家には、教え子たちがたまに遊びにくることもある。
もし今やってきたらどうするんだ、と彼は目で訴えていた。
「大丈夫、鍵はかけておいた」
不安そうに部屋の入り口を窺う彼に口付けながら、ゆっくりと彼の服に手をかける。
恥ずかしいのか、彼は一瞬目を伏せて、私から顔を逸らした。
拒絶の様子は見せていなかったが、彼の表情を窺いながら服を脱がしていく。
やがてズボンを脱がせようとしたとき、唐突に彼は私の腕を掴んだ。
「…別に君を許したわけじゃないからね」
「ああ、分かってるさ」
「……つ、続き、するだろう?」
…本当に、この男は可愛いことを言ってくれる。
私は返事をするのも忘れて、彼の首もとに顔をうずめて、暫く黙ってしまった。
どこか素直ではない彼は、私を見ることなく顔を逸らしたまま。
耳まで真っ赤になった顔を見せたくないからかもしれないが、丸見えだった。
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羽のように軽い矛盾点
ツンデレイトン…デスコールの前でだけツンデレになる教授のこと。
「別に君のことが好きなわけじゃないよ」「別に君がくれたから嬉しいんじゃないからね」など、
一見物凄いツンに見えるというとんでもなツンデレ。
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