ギシ、とベッドが軋む音をどこか遠くで聞いた。だめだ、意識がはっきりしない。
体中がやけに熱くて、それに触れる男の手との温度差をまざまざと思い知らされる。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
自分が自分でなくなるような。まるで何か知らない感覚を体に流し込まれるような。

「は、っ……あ、ぁ、」
「敏感だな、」

あの男の指で足の付け根をゆっくりとなぞられる。背筋がぞわりとした。
今まで経験が無いといえば嘘になるけれど、こんな感覚は知らない。知りたくなかった。
(もう嫌だ。止めてくれ!)

必死に快楽に逆らおうとする思考とは反対に、もう下半身は体液でどろどろになっている。
すべて、目の前の男によって教え込まれてしまう。
体を愛撫される悦び、体を開拓されていくことへの快楽、…。

「綺麗だよ、エルシャール。そして何よりいやらしい」
「くっ……は、ぁ…!」
「すべて…私に任せておけばいい」

もう感じたくない。気持ちよすぎてどうにかなってしまいそうだ。
それでも何とか必死に理性を繋ぎとめて、ぼやける視界の中で男を睨む。
体は屈しても、心まではそうはなりたくなかった。

「…それで睨んだつもりかね?エルシャール」
「…ッ」
「あまり可愛い顔をされると、」


ああ、駄目だ、熱、くて。死んでしまいそうなくらい、

「私も、我慢できなくなる…!」
「ぁ、…は、…あっ!」

熱い何かが私を貫いていて、私はもうそれがなんなのか考えるのを放棄した。
もはや思考があるのかどうかもおぼろげなまま、快楽に溺れることを選んだ。
揺さぶられる度に意識がなくなりかけるほど感じてしまう。

「あ、あ、」

機械が壊れたようにただ喘ぐ私を男は笑い、私の首元に口付けた。
つけたままの帽子と仮面が汗ばんだ首元をくすぐった。

「それが欲情だよ、エルシャール」

パリン、と。何かが割れる音。


「あ、あああぁ――ッ」

男の体の上で仰け反って、私は。…私は、あまりの快楽に意識をとばした。
他者の浅ましい欲情が、どくどくと体の中に注がれる。

この男の、何かを孕んでしまう。そう思った。


を注がれて、

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