Derive from BLOOD 七年前、僕は彼と出会った。 噎せ返るような臭いの中、凪いだ目をして立っていた彼。 僕と彼は、とてもよく似ている。 …懐かしさを、覚える程に。 彼は僕を殺さなかった。 あまりにも僕たちは似ていたから。 彼の目を見て、 どうして彼が噂通りの人物だと言えるのだろう? 僕は彼の本質を垣間見た。 彼もまた、僕の本質を見抜いただろう。 だから、見抜かなければならない。 彼が何を望み、行動しているのか。 その先に彼の未来は存在するのか。 …私は、血塗れの愛から派生した、闇の子供。 闇夜を見据え、手足を闇へ紛れさせて 生と死を見つめて真実を見抜く、彼の影だ。 彼と僕は似ている。 僕達二人の運命を狂わせたきっかけは、それだ。 「…ブラッディ・ラブ…」 湿気た生温い、血生臭い風が鼻を掠める。 …ああ、また彼は心に傷を作ったんだ。 街のどこかで彷徨う彼を想い、祈りを捧げた。 ********* アサシンパロディを「BLOODY ROSE」の途中から 派生させようかどうか迷っています。 本編はそのまま継続し、同時進行で 「Derive from BLOOD」も続けようかなー…なんて。 ※ロンドンライフ本編とは年齢が違います。 十年後において、ノエルは27歳です。 No.522 - 2010/04/26(Mon) 22:44:08 ********* 思いの交差、苦痛の連鎖 僕は不純な動悸でこの仕事に就いた。 他の構成員のように「世界を救いたい」とか 「歴史の真実を知りたい」とか「街を元に戻す」とか、 そんな高尚な考えは持っていないんだ。 僕はただ、僕と似た面影を持つ存在を 追いかけたかっただけだったから。 でも僕が彼に抱くのは恋や正義感、 恨みなどとは全く違うものだ。 アーネストに感じる親しみを彼には感じないように、 彼に感じる望郷のような気持ちをアーネストは勿論だけど、 他の人間に感じることはない。 恋じゃなければ執着なのか。 でも執着じゃなければそれは興味なのか。 よく分からないけれど、とにかく、僕は彼の足跡を辿っている。 貴方は似ている。 僕の根元にある闇と似たものを抱いているのを 僕は知っている。 そして貴方も、僕が貴方が他者にそうしたような 暴力を奮いたいという願望を持つことを知っている。 「ノエル、」 「…あ…」 はっとした。また、白昼夢を見ていたみたいだ。 思考癖をアーネストは何も言わないけれど、 不安そうに僕の顔を覗き込んだ。 「考えすぎだ」 「そうかな。…そうだね」 それでも時折考えてしまう。 彼は何を望み、この物語はどうやって終わるのか。 この街に対して、僕はあまりに非力だ。 No.527 - 2010/05/08(Sat) 15:48:24 ********* 純粋な死亡観 ばたり、倒れた地面の上に幻を見た。 可憐な蕾が今まさに花開こうとする幻を。 それは私の自由が花開くことを意味していたのか。 私は重い目蓋をそっと閉じ、思考の終焉を受け入れた。 No.536 - 2010/06/03(Thu) 00:59:08 ********* 壊れかけた街と過去の亡霊 あちらこちらで火柱と煙、この街ではそれが日常。 繁華街としてかつて繁栄していた大通りに建つ アパートの屋根に座りながら、 静かにそれを傍観する。 ここからの眺めだと、まるで星が地上で燃えているようだ。 実態はそんなに素敵なものではないということは百も承知の上。 「綺麗だな」 「…うん」 白いパーカーを夜風に遊ばせながら、 隣で同じように街を見下ろしていたアーネストは そう言ってフードを被る。 僕は、ただその隣でぼんやりと 拳銃を握り締めたまま街を見守っていた。 いつからこの街では星がほとんど見えなくなったのだろう。 「そろそろ時間になる。『レオン』、行こう」 「ああ、そうだね」 屋根から滑り落ちないように慎重に立ち上がり、 アーネストを振り返る。 拳銃をホルダーへと収めて表情を殺して 目線を鋭くして僕は『レオン』に為りきる。 ふと、もう一度だけ眼下で燃え広がる星を見つめた。 「ほんと、綺麗だね」 (…どんなに汚くても燃える様は美しいね) ********* そろそろ再始動します。 『レオン』が誰か、というところまで進めたいな。 No.559 - 2010/10/03(Sun) 18:10:41 *********