照明の落とされた室内は何処か夜の危うさをその闇に含んでいるようで、 互いの僅かな呼吸の音でさえ鼓膜を震わせる。 こちらを伺う少年の、うっすらと見える体の輪郭はほっそりとして、 それでいて少し丸みを帯びていた。 室内の隅からひたひたと静かに足元から冷気が上ってくるようで、 ストラウドは疲れきった体を僅かに強張らせ、ふっと息を吐いた。 たとえ目の前に自分の命を狙う者がいたとしても、 この男は決して怯えた様子を相手に見せることは無いのだろう。 少し目を伏せると、エルディは 華やかな飾りつけのされた衣装を素早く、滑らかに脱ぎ捨て、シャツ一枚の姿になった。 サイズが若干大きめに作られたシャツの下から、うっすらと素肌の色が見え、 無垢な表情と対照的に艶かしい印象を与える。 無表情でそれを見つめていたストラウドは、ぐったりとソファに身を預けたままで その足のつま先から肩までを流し見た。 「何のつもりだ?」 「なにも」 内緒話を囁く様に小声で答え、唇の端が動くだけの微笑を浮かべたエルディは、 横たわったストラウドの傍に座り込む。 衣装を着たままソファに横たわっているストラウドに対して、 シャツを身に纏っているだけのエルディの姿は酷く卑猥だった。 そのまま言葉も無く、革張りのソファに横たわっているストラウドの上に乗り、 漆黒の上着のボタンを素早く外していく。 いつもとは違って、性急で積極的なエルディの行為を、 ストラウドは常時と変わらぬアイスブルーの目でじっと見つめていた。 「抵抗しないのか?」 「…俺が疲れてるのが、分からないか」 「知ってるよ」 手で引っ張る時間が惜しいのか、 エルディは上着の下に着ていたシャツのボタンもすっと外し、 それを口で引っ張って開かした。 流石にそれ以上好き勝手にやられるのは気に障ったのか、 その右手がエルディの両手を捕らえ、上半身を起こす。 そして、開かれていた上着とシャツを傍に置かれていたテーブルの上に投げると、 噛み付くようにお互いの唇を貪り合った。 放り投げられた華やかな黒の衣装がぱさり、と完全にへたりつく時、 二人の体は縺れ合い、今度はエルディが押し倒される。 「馬鹿が」 「…その気になったか?」 「さあな」 僅かな布ずれの音と共に、ゆっくりとストラウドは組み敷いている細い体の隅々を、 態と音を立てて舐めあげていく。 動脈の通る綺麗なラインの首筋、肌蹴たシャツから見える胸元、 呼吸のたびに上下する腹部、そして猛る熱そのもの、 順々に、けれどむず痒くなる程穏やかに愛撫を続けるストラウドの顔は あくまでも冷静沈着としていて、感情は見えない。 ただその目はじっとエルディに注がれ、伏せられている碧眼へとじっと視線は突き刺さり、 愛撫と伴って快感を増幅させた。 「…ぁ、…」 「して欲しいか、」 「ぅ…ぁ、…ほし、…い…」 エルディの両手を拘束していた右手はそのまま、 左手が脇のラインをなぞる様に、エルディの下半身へと降りていく。 熱っぽく見つめ返すのも一瞬、その目は零れるほど大きく開かれ、 与えられる快楽と甘美な光を湛えてゆらゆらと揺れた。 無表情であっても、その目だけは欲望を宿すストラウドを誘うように肩に手を回し、 エルディは再びあの艶かしい笑みを浮かべる。 二人の呼吸が部屋の壁にぶつかり、僅かに跳ね返り、 それがまた秘められた情欲を掻き立て、熱をぶり返させた。 「答えろ、エルディ。何が、あった」 「何、って…」 「お前がこれほど夢中になるのは初めてだ」 言いながら、再びエルディの身体に口付け、ゆっくりと愛撫を繰り返した。 何処か頭の遠くで、氷が溶けて少しずれる時僅かに聞こえる、 あの鋭利な音が、かつん、と響いていた。 ※続きが書けたら、追記…したい…

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