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「じゃあ、お前があの女の息子か」
「で、でも青いだけだしさ」
真剣な顔をしたバルフレアに詰め寄られ、思わず後退りした。
あんなことがあった昨日の今日だから安心できない。
第一、容姿と声のミスマッチに未だ慣れてないのに。
「とりあえず訊きたいんだけどさ、
結局俺はアンタの味方?それとも敵?」
「ばーか、敵だったらとっくに殺してんだろが」
だっ誰がバカだッ!と反論したいけれど、
バルフレアの目を見たら言えなくなってしまった。
視線が自分に向けられると身体がうずうずしてしまう。
あれ、…なんでだろ?
「ヴァン」
「な、何だよ?」
「人から物を借りパクした時は代償が必要だよな?」
いつの間にか人の姿になったバルフレアが
俺の肩に手を置く。
昨日と同じ…いや、
それ以上の至近距離に端正な顔があった。
ドキ、と大袈裟な程驚く。
悪戯を思いついたように意地の悪い笑みを
浮かべている点からして…まさか。
まさか、な。
「今後俺、お前の家に居候しつづけるぞ」
「なっ!?ちょ、ちょっと待て!」
「もしかしたら、あの女が帰ってくるかもしれないだろが」
胡坐をかいて座り込んだバルフレアがにやり、と笑う。
畜生、してやられてしまったッ!
ただでさえこの男の所為で相当苦労してるのに。
食費とか電気代とか、生活費…どうしよう…。
「なに、別に心配はいらねぇよ。
第一俺はいつもこの姿でいるって訳じゃないしな」
「問題はそこじゃないッ!」
そして見当違いな心配をしている自分に気がついた。
なんで昨日といい、今日といい、
この男のペースに乗っけられてるんだろうか。
児童相談室に行って家に不審者がいますとでも言いたい。
「んじゃ…そういうことだ。
俺とお前で共同生活。こんな美男で文句無いだろ?」
「二人分の生活費賄えるほどに俺ん家、裕福じゃないんですけど」
「それは俺がなんとかしてやる」
で、早速だがとりあえず昼飯作ってくれねぇか。
バルフレアは平然として俺に向かって
空になったカップラーメンの容器を差し出した。
それを手に、俺は台所へと足を向ける。
無論憮然と胡坐をかいて肩を解しているバルフレアに
思いっきりクッションを投げるのも忘れない。
ああ、本当にアンタって人は!
……でも慣れ始めて楽しんでる俺が居る。
そんなこんなで、結構一人は寂しいもので。
だからといってまだバルフレアを認めたわけじゃない。
絶対に、決して、っていうか断じて違う!
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give me LUNCH, please
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