訳もなく、ずっと俺は走り続けた。

あっという間に王都の外まで来ていた。

夜の砂漠の肌寒さが熱い目元に心地よい。



夕暮れの空に、バルフレア、と言ってみた。

そんな自分に嘲笑する。


何もない空に、呼んでも・・・もう。

もうあの人は俺の所へは来ない。

何故なら彼は王女と。








・・・やめよう。

怒りを静めるための深い深呼吸。

落ち着け、お前はそんな器じゃないんだ。


そう、そんな。



目を瞑る。嫌だ、俺はあんたのことを。

あんたのことを愛してたのに。


でも戻れない。戻れないんだ。

潔く諦めろ、空賊であるヴァン。







「ファムラン、
 ・・・・・・ファムラン」






いつの間にか泣いていた。怒り?違う。

悲しみでも苦しみでもない、これは。


これは、子供だった自分への追悼なんだ。













さよなら、この身の奥で燻る気持ち。




さよなら、小さくて罪を知らない俺。




さよなら、ファムラン。


本当はとっても愛してる。

でもアンタはそれを踏みにじった馬鹿野郎だ。







畜生。小さく叫んだ。


涙が、止まらない。
















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