夜陰に眩しいくらいの光を投げだす月に、 紫煙をたゆたわせる。

ああ、やる気が出ない。何が、とかではなく。
それはアイツとて同じ事だろうし、 久しぶりに寝台の上でシーツの海を泳ごうか。


するりと肌触りのいい背中を見せるソイツ。

何を考えたかこっちを振り返って睨みつけてきた。
あからさまに単調な声でおもむろに言われた。

「そんなに俺、色っぽい?」

返答する代わりに肩をすくめればまた脱ぎ始める。

長椅子の上に掛けられた寝間着も、 この部屋に差し込んでいる月光で青く光っていた。


煙臭くなるのはソイツが嫌うので窓を開けた。
たゆたう煙が白く濁って絹のようだ。

着替え終わった細い体躯が歩み寄ってくるのを 見つめる。

それが男だとは分かっていながらも抱いてしまうのは、 どうしようもなく手放せないからだ。
不可思議なほどすんなりと俺に合うその体。
褐色の肌が触り心地が良いことを、俺は知っている。

「先寝てるからな」

ふっと吐き出した煙に視線を向ける。
嗚呼、いつからこうまで依存してるんだ俺は。
浮かぶ嘲笑で頬の筋肉が緩んだ。

憂鬱気味な夜に少しだけ謝礼でもしてやろう。

「おいヴァン、ちょっと待て」

聊か乱暴に煙草を灰皿に押し付けた。

不機嫌そうな声にソイツが俺を振り返る。
あんまりにも驚いたようだったので、 その細腰に腕を回して口付けてやった。

どうせ依存するなら、 奈落の果てまでやってやろうじゃねぇか。


プロレタリアートに 成りすます
ブルジョアジー

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