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時に言葉はすごく残酷になる。
そして時に、たった一片の言葉は救いにもなりえた。
相反する特性を持つ言葉は言霊を残して、
言霊は俺たちを縛り付ける。
いつもどこか遠くを見ているアンタに甘えたい。
でもタイミング逃して舌打ちしてるんだよ。
甘えるのも下手だけど、他人に優しくするのも半端。
だからアンタの言葉は、とても頼りない。
頼りない言葉を頼るよりはもっとアンタのこと知りたくて、
そっと目を瞑って広い背中に頭を寄せる。
呼吸の音がぜい、ぜい、と服越しに聞こえてきた。
「何やってんだお前は」
「なーんにも、してない」
困ったように眉を顰めるアンタの顔も頼りない。
だけれど、その頼りない顔が自分に向けられる度に
とてつもなく嬉しいと感じてる。
空中庭園に近いテラスで座っている俺たちの髪を、
少し冷たい秋風が吹き抜けていった。
ぜい、ぜい、と上下する背中が暖かい。
もっと寄りかかれば、受け止めてくれるかなんて
期待してみたりする。
「寒いのか?」
「平気だって。俺そこまで弱くない」
「ガキだしな」
ガキって言うな。
そう言ってもっと体重をかけてやった。
俺とは体格差があるから、
バルフレアがしっかりと受け止めてくれる。
口には出さないけれどちゃんと心配してくれてる。
予想内の反応に安堵して肩の荷を降ろした。
ぜい、と膨らむ肺と、どくどく言う心臓を感じて、
目蓋を閉じて深呼吸。
大丈夫、俺はまだいつもの俺でいられる。
心の中で独り言。
終焉を感じる身体が震えそうで、腕を抱える。
バルフレアが何も言わずに抱擁をしてきた。
「バルフレア」
「…あんま無理すんなよ」
「もちろん分かってる、」
でもさ、頼りない顔のバルフレアなんて、
頼り甲斐ないんだよ。
情けない顔で落ち込む顔を思いっきり抓った。
不安なのは俺だって同じってことを示す為に。
そしたらいつもの皮肉った顔に戻ってる。
「頼りねぇのはお前の方だろうが、クソガキ」
「女たらしのバルフレアに言われたくない」
故郷捨てて望みをかなえたアンタなんだから、
もう少しだけ俺に頼らせてくれよ。
喉元に出掛かった言葉を飲み込む。
代わりに、蒼く綺麗な空を眺めていた。
こだわらないでいるのがアンタの長点。
変なところで引きずるのがアンタの欠点。
…俺だけに見せるのは、卑怯な点。
違わないよな?
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俺に涙をくれよ、アンタの分まで
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