もしも、世界に戦争なんてなかったら、

馬鹿で浅はかで答えの見え透いた質問でした。
戦争がない世界、そんなもの存在しないに決まってる。
「にんげん」は皆争いたがっているからでした。

無慈悲な神さまは、俺に制裁を下したのでしょうか。
独りで生きろ、生きていけ、と俺を残したのでしょうか。
だけどどっちでもいいのです、俺は生きています。
生命が輝く限り、俺は死ぬことはできなくなりました。

でも分かっていました。
仲間がどんどん流行り病で死んだりしていくのが。

神さま、俺達は酷い事をしたのですか。
絶対許されない悪事をしたのですか、「にんげん」は。

神さま、もう俺は死にたいのです。
戦争に負けたこの国は、もう滅びてしまえばいいんです、
だって俺達を守ることすら出来なかったんですから。

また、隣の子がどんどん冷たくなってきました。
俺の幼馴染の子が、必死で暖めようとしています。
でも無駄でした、その子はもう死んでいました。
唯一流行り病にならなかったのは、俺と、 それからずっと一緒に居る子だけでした。

でも、俺は死ねません。
心臓を刺すナイフも、飛び降りる勇気もありません。
家も家族もお金もありません、皆帝国が盗っていったのです。
そうだ、帝国が悪いんだ。俺達はなんにも悪くないんだ。
だって母さんも父さんも良い人だったでしょう。
帝国だけは許しちゃいけない、そういうことでしょう。



―――


そうやって俺は生きてきました。
それが正しいのか分かりません、それしかありませんでした。
正義じゃない、でも、俺達は正しいのだと思って。
でも気づいてしまったのです。

帝国は俺達を拒んだんじゃない、ということを。
幼い俺が死にそうになっていたのを助けたのも、帝国だと。
だから俺は生きていきます。
今度は、神さまではなくて、青空に憧れて。
だからもう神さまは信じません。


(だって おれからすべてをうばったのは、 まぎれもなくあなたでしょう?)


俺は、そんな神さまなんて、いりません。
だから、せめて、そう、俺自身を信じてあげたいのです。


さよなら、

(神さま神さま、俺の願いをきいてください)

だってそれはただの根拠の無い願いだ。

(そして 二度とこの教会の扉は開かれないのだ)


小さい頃の俺は無力でも、今は違うと誰か言って。


子どもの世界
例え否定したくても、過去はちっとも色褪せませんでしたから。

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