人間はその内側に必ず何かしらの衝動を秘めている、と思う瞬間がある。
戦いの最中では当然かもしれないが、無表情で凶器を振り回す姿を見ていると、 もしかしたら自分は笑いながら凶器を振るうのかもしれない、と 自分自身の殺気に慄くことがある。

そんなことを考えながら(少し前から使い始めたものだった)銃を手入れしていた。
黒々としている銃身は冷たく、火照って熱い指先をひたりと冷やしてくれる。
そうやってぼう、と無心でいる時に、低い声が沈黙に横槍を入れた。

「戦ってる時は楽しいのか、おまえは。
 いつもうっすら笑ってるが」

同じことを考えていたのか、と驚いて手が止まり、ついでに口があんぐりと開いた。
問いかけた本人は大剣をじっと見つめたままこちらに目を向けることはなく、 それに比べると大げさな反応を示した自分が馬鹿馬鹿しかった。
なんでもないように訊かれたので、なんでもないように返しておく。

「さあ…、自然と笑ってるだけだなあ」
「意外と好戦的なのかもしれないな」
「それを言うならあんたの方が……」

好戦的じゃないか、と言おうとして止めた。
バルフレアは昔から何処となく自身に対して斜めの目線で接しているのだから、 とうに自分がそうだと分かっていて俺のことを言っているのかもしれない。
本人が当然の事実として思っていることをほじくり返すのは 良くないだろうと思って俺は口を閉じた。
バルフレアは相変わらず大剣と向き合って俺に背を向けている。

「そうだとしたら、あんたに似てきたのかもな」
「…止めとけ、まともな人間にならない」

苦々しく呟いてバルフレアは大剣をしまったので、俺も銃をしまった。
元々綺麗だった銃に手入れなんて必要なかったのだけれども、暇だったからやっていただけだ。
あまりしなくても問題はないだろう。

そういえば、
何時からバルフレアに合わせるようになったんだ?


#4+

向こうに合わせる気配がないので合わせ始めたヴァン。
バルフレアは年をとると頑固になりそうな方だと思う。
年をとれば寛容になるヴァンが合わせ役になるのです。

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