ふらつく足を何とか踏み止まり、俺は青すぎる空を見上げた。
周囲の景色は、意識が途絶える前と後では全く異なるものになっていて、
一体俺はどこにいるのか、少しだけ躊躇いを覚える。

俺は生き残ってしまった。
物分りの良い彼は、俺を生かす為に肉体を腐らせ、 その過去と居場所でさえも
俺に差し出してしまった。
それがどれだけ彼にとって辛いことか、俺はよく知っていた。
知っていた上で、

俺はこの世界の彼として生きることを選んだ。

先程の爆発によって 空気はじくじくと茹だるように暑いだろうと予測していたが、
実際はそれほど暑くもなかった。
辺りを見渡しても、自分以外は生きている人間はいそうにない。
見慣れていた筈の風景が、どこにもなかった。

「…そう、か。全部、壊れちゃったか…」

何もかも失ったことを理解しても、 胸の中は風穴が空いたように、綺麗に空だった。
きっとこんな惨劇が起きてしまうことを、 ずっと前から知っているような気がした。
だから俺は、周囲にあると思われる死体を どうこうしようとはせず、
ゆっくりと出口を探して瓦礫だらけの道を歩き出す。


それからずっと、俺は最後の夢を見続けている。
いつか俺がこの夢を見なくなる時が来たら、
その時、きっと俺は喜んで死ぬんだろう。
そう思いながら、俺はずっと、 夢の中で座り込んで“終わり”を待っている。


#0 はじまり

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